だらだら滞納

 家賃滞納の明渡の裁判は、家賃の3ヶ月分の滞納額があれば訴訟提起できます。家賃5万円の物件なら滞納額は15万円、家賃10万円の物件なら滞納額が30万円を超えればということです。逆にこれより少ない場合には、裁判所はまだ信頼関係が破たんしていないという理由で、原則は訴状を受け取ってくれません。こういう事情を知ってか、払ったり払わなかったりで、滞納2か月分くらいをキープする賃借人がいます。家主さんとすれば、手続きで退去してもらうこともできず、かといって督促することもストレスで、かなり困った賃借人ということになってしまいます。

 このような賃借人の場合、とりあえず滞納額をゼロにしてもらう約束を一日でも早く取りつけることが重要です。合意書は毎月の支払金額だけをブランクで作成して持って行き、その場で賃借人に金額を決めてもらって書きいれ、署名押印してもらいましょう。
この合意書に入れたい内容は、次の5つのポイントです。
 1.現在の滞納額 
 2.毎月の家賃は約定日に必ず支払う(これ以上滞納額を増やさない) 
 3.滞納額を2.の家賃に加算して、毎月いくら支払う
 4.この約束が守れなかった場合には契約を解除され、任意に退去する
 5.残置物の所有権は放棄する 

 細かく説明すると、まずは双方で齟齬がないように、滞納額を確認するということが必要です。そしてそれについて、どう支払っていくかという約束をします。まとめて払えればいいのですが、そもそも滞納している賃借人なので一括での支払いは現実的ではありません。月々家賃プラス1万円ないし2万円が限界でしょう。家主さんとすれば滞納額を払ってもらうことは当然ですが、これ以上増やしたくないはずです。そこで2.の必ず毎月の家賃は、約定通り支払うという項目を入れておきます。その上で、滞納額の決めた支払い額を明確にしておきましょう。毎月の家賃を払わない、もしくは滞納額の分割を支払わないとなれば、一度は信頼して合意したのに、それでも払わなかったね、だから信頼関係は破たんしたね、ということになり、裁判所は滞納額が3ヶ月分なくても訴訟提起を認めてくれることになります。
そこをより強化するためにも、賃借人側は約定通り支払えなかったら契約解除されてしまうことを認識してもらうことが必要なので、4.の項目を入れておきます。また夜逃げされることも想定して、残置物の所有権放棄を入れておけば安心ですね。

 このような合意書が取れれば、「払ったり、払われなかったり」というストレスから解放されることになります。しかし合意書が取れたからといって安心するのではなく、むしろ取った後、必ず支払はチェックしましょう。約束が守れなかったタイミングで、すぐに次の行動に移らなければ、「結局合意書にサインはしたけど、守らなくても大丈夫」と逆効果になってしまいます。また賃借人と会えない等で合意書にサインがもらえない場合には、「金額を記入し署名捺印の上、返送してください」と合意書を郵送しましょう。郵送等の記録もとっておいて、返送されてこなければ「信頼関係破綻」ということを証明する証拠にもなります。
 ダラダラ滞納は、このように緻密な証拠を積み重ねることで、訴訟提起することもできます。なによりも早めに行動することが、解決へのポイントになるので覚えておきましょう。

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