家賃滞納督促 Part4

一般的に家賃の3ヶ月分程度の滞納額があれば、明け渡しの訴訟を提起することができます。家賃5万円なら15万円の滞納額、家賃10万円なら滞納額が30万円以上ですね。ところが、3ヶ月分まではいかないけれど、払ったり払わなかったりで、ずっとある一定額の滞納をしている賃借人はいませんか? そういう場合はどうしたらいいのでしょうか。

まずは訴訟になったときの、証拠を作るということを念頭において督促をしていきましょう。裁判では「家主はここまでしたのに、ダメだった、だから信頼関係が破たんした」というロジックが必要です。そのため、最悪訴訟になったときに、「信頼関係が破たんした」と主張できなければ、明け渡しの判決はもらえません。

では具体的にどうすればいいのでしょうか。

 

滞納者に「なぜ現在滞納状況なのか」ということと、「それをどうやって返済するのか」ということを聞いてみましょう。家賃は自分の収入で払える範囲で契約しているはずなので、滞納になる、ということは異常な状態です。どのような異常事態なのか、それが改善される問題なのかどうなのか、確認する必要があります。異常事態が続き、改善される見込みが薄いなら、いち早く安い部屋に転居して、債務の額を確定し、生活費を圧縮して生活を立て直さないといけません。

本来自分から計画していかねばなりませんが、滞納できてしまう人は、この逆算での行動がとれないタイプの人たちです。だからこそ家主側が、サポートする必要があるのです。

もし今の異常事態はすてに終結し、これから改善できるとなれば、現在の滞納額を、一日でも早くプラスマイナスゼロにする、このような約束を交わすことです。分割は、長くても1年内に完済できるよう支払ってもらいましょう。たとえば12万円の滞納額だとすれば、家賃プラス1万円支払ってもらうことになります。

 

約束ができたら、かならずそれを書面にすることが必要です。①今日現在の滞納額、②毎月の家賃は約定通りに支払うこと、③滞納額を分割して月々いくら払うこと、④ ②③ともに約束通りに支払えなければ、翌月中に自ら退去すること これらを明確に記載し、滞納者に署名捺印してもらいます。よく滞納額だけの支払いを分割で猶予する確約書を見ますが、大前提として、毎月の家賃も、約定通りに支払う旨を忘れずに入れてくださいね。

 

そしてここからがポイントです! 家主さんの中には、約束ができたからと安心してしまう方がいらっしゃいますが、ここからが勝負です。もし約束通りに支払われなければ、即、督促することが重要です。「分割の猶予まで与えてあげたのに、でも約束を守ってくれなかったよね、だから信頼関係は破たんしたので退去してね」そう詰め寄らないといけません。ここで行動しなければ「約束さえすれば大丈夫」と甘く見られてしまいます。そしてこの先の支払いは、見込めなくなってしまいます。この書面は支払ってもらうためのものではなくて、万が一ダメだったときの訴訟の証拠と位置付けてください。

 

家賃の3ヶ月分の滞納はないけれど、ダラダラ続く滞納は、この確約書とそれが守られなかったという事実で、訴訟を提起することができます。また滞納の長引いている期間が長ければ長いほど、「信頼関係の破たん」を理由に明け渡しの判決を得ることができることを覚えておいてください。