家賃滞納督促 Part1

賃貸経営において、いちばん困るのが家賃滞納でしょう。空室なら工夫次第で入居者を確保することができます。しかしながら滞納は、督促という後ろ向きな作業が精神的に重くのしかかります。しかも退去させようと思っても、ひと苦労。

そもそも「払います」「貸します」という賃貸借契約の大原則を守ってくれないのですから、家主さん側のストレスは相当なものです。

一方で「騒音問題」や「ペット不可マンションでのペット飼育」等、他のトラブルに比べると、最終的には訴訟手続きで簡単に追い出すことはできます。ただこの時に注意しなければならないのは、追い出すことはできても滞納分の回収はほとんどできないということです。

家賃滞納する人は、ほぼ間違いなく他に借金があります。収支のバランスが既に崩れていて、督促の緩い家賃の支払う優先順位が低いだけなのです。また支払わなければならないものの中で、家賃はおそらくいちばん大きなウェートを占めているでしょう。そのため他の細々としたものを支払い、家賃が後回しになってしまうのです。そのような状況で回収していくのは、至難の技です。しかも退去してしまえば、新たな生活の上に滞納分の支払いが必要となるので、さらに支払いは望めなくなってしまいます。

家賃の回収ができないとなると、滞納額をためないことが絶対条件になります。家賃の3ヶ月分の滞納額があれば、訴訟手続きを進めることができます。そこまでは地道に督促をし続け、それでも支払いが改善されなければ手続きに入る。これが最終的に家主さんの背負うリスクを、最小限にする法則です。
ではどのように督促をすれば良いのでしょうか。

まず大原則として、絶対に感情的にしないこと。ここを感情的にしてしまうと回収率が下がってしまうので、淡々と督促することを心がけましょう。
書面でする場合、内容証明郵便は高いのでやめておきましょう。普通郵便で督促状を送るか、物件が近ければポスティングでも大丈夫です。大原則を守り、督促状には滞納の事実と、振込先を明記します。1週間程度の支払い期限もつけましょう。そして最も重要なのが、必ず記録を残しておくということです。いつ、どのような方法で、どの書面を滞納者に届けたか。そしてその反応はどうだったか。ここは必ず記録しておきます。手書きの書面の場合には、コピーをとっておきましょう。

電話の場合も同様です。いつ、誰が、誰に対して(賃借人本人や連帯保証人、賃借人の家族等)、携帯なのか固定電話なのか、そしてその時のやり取りの一部始終を記録しておきます。もし留守番電話になった場合には、淡々と支払いがない事実、期限を切っての支払いのお願いを吹き込みます。そして折り返しがあったかどうかも、きちんと残しておきましょう。

賃貸トラブルの場合、「出て行って」と言えるためには、家主と賃借人との信頼関係が破綻した事実が必要となります。滞納というだけでは弱く、家主側はこんなに督促をしたのに、それでも支払われなかったという部分を裁判所はチェックします。そのためにただ漠然と督促するのではなく、万が一訴訟になったときにすぐに出せるよう、記録は家主さんの命綱となるのです。

2回目の督促の時には「◯月◯日付の書面でもお伝えした通り……」と、こちらが記録をとっていることを相手方に分かるようにしましょう。こうすること
で、回収率はアップします。